山内拓人さん(35歳)※取材時の年齢
- 仕事 :CG・VFXアーティスト、CG監督
- 出身地:愛媛県宇和島市
- 居住地:東京都
どんな仕事をしているんですか?
1日のスケジュールを教えてください。
短期の仕事では、夜遅くまで仕事したり土日に働くこともあります。しかし、28歳で独立してからは、基本的に時間を決めて、メリハリを意識して仕事をするようにしています。
業界に入ったばかりの頃は、好きなことを仕事にしているんだと、就業時間や休みを無視して働いていました。しかし、好きだからこそ長く安定して続けるために、今のワークスタイルになってきましたね。
なぜ今の仕事を選ばれたんですか?
きっかけは、昔から映画が好きだったからです。
ドラゴンボールやゴジラ、東映アニメ2本立てなど、保育園の頃から映画館に通い、よく妄想している子供でした(笑)。しかし映画を仕事にするという発想はなく、中高時代は映画から遠ざかっていたんです。
しかし大学を辞めてしまったタイミングで、「改めて、自分の好きなものは何だろう」。そう考えたときに、最初に浮かんだのが映画でした。CGを選んだのは、当時、日本ではCGやVFXが認知され始めた時期で、映画制作を学んだことのない自分にも可能性があるのではと考えたからです。
それから、東京のCGの専門学校に通ったのち、卒業制作を評価してくれた会社に入社。そこでみっちり経験を積み、独立しました。
フリーランスなので、いいものを作らないと次の仕事がこないなど不安も大きいですが、小さい頃に頭の中で描いていた世界を自分で作れることに喜びを感じています。
「これしかない」と思えるほど、好きな仕事に巡り合えたことに感謝していますね。
これまでの人生について教えてください。
小・中・高校時代
昔からモノを作ることが好きで、将来の夢は料理人でした。なぜ料理かというと、相手が喜んでくれる姿を間近に感じられると思ったからです。CGも、相手がどう感じるのかを考えながら作るので、それは同じかもしれません。
しかし、中学に入り将来の夢がリアルになったときに、周りと比べて劣等感を感じてしまったんです。「自分に何ができるのか分からない」。結局、周りに合わせるように高校・大学進学を選びました。自分の好きなこと、目標に向かうというより、周りの人たちから浮かないようにと進路選択しましたね。
ドロップアウトした大学時代
大分大学に進学し、人工知能を学びました。学校を選んだのは本当になんとなく。勉強をするモチベーションはありませんでした。成績は悪いし、卒業する自信もない、それにも関わらず「自分は周りの連中とは違う」と思っていました。何もできないのに、本当にひねくれていた時期でしたね(笑)。
バイトに明け暮れ、悪い友達ともつるむようになり、逃げるように大学を辞めました。両親には、夢を語って大学を中退しましたが、それが言い訳だったのは全てお見通しだったと思います。それでも見守ってくれた両親には本当に感謝しかないですね。
自分の道を見つけた専門学校時代
散々迷惑をかけて、お尻に火がついた中で見つけた道がCGでした。
当時は、山崎貴監督の『ALLWAYS 三丁目の夕日』がヒットし、日本でもCGやVFXが注目され始めた頃。新しい分野だったこともあり、「これなら自分でも映画に携われるかもしれない」と考えました。
それから上京し、改めて専門学校に入り直して、半年間みっちりCG製作を学びました。専門学校卒業後は、実写・アニメと幅広く制作している映像制作会社で働き始めました。
激務→独立にいたるまで
20代の頃はいわゆる激務・薄給(笑)。好きでこの業界に入ったので、どんな環境でも許せてしまう自分がいました。しかし、才能があるのに環境が原因で辞める人を見て「好きだからこそ長く働きたい」と感じたんです。
その後、時間とお金の安定を求めて28歳で独立。お金に対する考え方も深まり、様々な方と巡り会えるので正しい選択だったなと思っています。先日は、この業界に入るきっかけにもなった山崎貴監督と10年越しに3DCG映画『ルパン三世-THE FIRST-』で仕事ができたことがとても感慨深かったです。
山内さんを表す、価値観を教えてください。
『自分らしく生きる』
「自分らしい生き方を模索する」
どんなに好きな仕事でも徹夜や休日出勤が続くと、続けるモチベーションすらなくなってしまいます。僕自身、かつて仕事を嫌いになりかけた事は何度もありました…(笑)しかし、自分に合ったワークスタイルを確立してからはそれもなく、日々楽しく仕事をしていますね。
将来は、映像の仕事をしながら、実家の味噌屋を継ぎたいと思っています。味噌屋のCMを自分で作るなど、今の仕事を活かした恩返しをしたいですね。とはいえ現在、地方の場合、都会に比べて映像の分野はマイナス面が多いのも事実です。
愛媛に戻っても仕事が続けられるように、いろんな人との繋がりを大切にしながら、さらに実力をつけようと日々努力しています。
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映画やTVを中心に、CG・VFXを使った映像制作を行っています。
CGは表現の幅が広く、通常の撮影や特撮では難しい表現を可能にしてくれるところが魅力です。
例えば、映画『シン・ゴジラ』や『進撃の巨人』。現実世界には存在しないキャラクターはCGで再現するしかなく、まさにCG大活躍の作品でした。一方、映画『図書館戦争』では、煙や火花を追加したり、俳優さんを吊っているワイヤーを消したり、細かい作業を行いましたね。
大作映画となると1ショットを何ヶ月もかけて作ることもあり、気が滅入りそうな地道な作業も多いです(笑)。しかし、大掛かりなセットが組めない、狭いスタジオでしか撮影できない、数千人のエキストラを呼ぶのは物理的に難しいなど。数々の制約を解決できるCGは、最近の映画にますます欠かせないものになっています。
今年でCGアーティストとなって12年目。現在は、日本の映画・TV・CMのほか、海外の映画案件にも携わっています。ハリウッド映画のCG・VFX制作は、世界中で1000人以上のクリエイターが携わっているため、コミュニケーションは全て英語。それが今一番大変なことですね(笑)。